主人公は12歳。小学校6年生です。父と母と二人の兄、一人の姉、一人の妹の7人家族。
お母さんはいわゆる「教育ママ」で、テストの点数と宿題と通信簿の成績で「良い子」か「悪い子」か決める。主人公の秀一(ひでかず)は兄弟姉妹の中で唯一「できの悪い子」という烙印を押されていて、悪いことをしようがしまいが帰宅するごとに母親から長時間にわたるこごとを聴かされます。
特に、妹のマユミは同じ小学校の4年生なので秀一の行動-どんなことで廊下に立たされたかとか宿題を忘れていたかとか-母親のための諜報活動に余念がないので、どんなに隠そうとしても秀一は家に帰れば母親の懲罰にさらされないわけにはいきません。
そんな秀一が「家出」をしてしまうハメになってしまうところから物語が動き始めます。
母親は子供のことを絶対に信用していません。子供が親に逆らうなんてありえない話なのです。
「家出」をしてしまった秀一は血なまぐさい事件に巻き込まれます。殺人事件を目撃してしまうのです。
家出先で世話になる祖父と娘(秀一と同じ小学校6年生)の家の事情も複雑です。
だんだん秀一はたくましくなっていきます。本当に自然にそのたくましくなっていく様子が描かれています。
なので、いったん家出から自宅に戻ったときにはもはや母親の言うなりの子供ではありません。口答えができるようになっていたのです。
秀一の家出と前後して、「優等生」とみなされていたほかの兄弟姉妹たちも母への反抗心を次第に露にしていきます。
そうなると母親のヒステリーを誰も止めることができません。
お父さんとお母さんの夫婦喧嘩も深刻なものになりつつあります。
この家族は今にも崩壊してしまいそうです。
秀一は秀一で家出のときにかくまってもらった家の自分と同い年の娘のために彼女のいないと思われていた母親の出現の真偽を確かめるため探偵まがいの仕事もしますし、彼女の「大事な未来」のために本当に命がけの行為に出ます。
秀一は死なずに済み、再び家に帰ると自分の家は焼け落ちていました。アイロンのヒューズから失火だったそうです。
最後に秀一が夏代(例の秀一が助けようとした同い年の少女)が作ってくれたぼたもちをショックで倒れている「おふくろさん」に「なぐられるかもしれない」にもかかわらず食べさせようとするところでこの作品は終わります。
秀一も成長しましたが、秀一のお母さんも「家が焼け落ちる」ことによって「成長」を遂げるであろう、という余韻を残しています。
昔、「科学と学習」という学研から出ていた「学習」に連載されたいたそうですが、「頑張れ」という声援も多かったそうですが、「こんなもの書くな!」という非難も相当すごかったそうです。
今読んでもその過激さがひしひしと伝わってきます。
家族の中の誰が犯人なのではない。
みんな一緒に成長していくのだなと思いました。
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