『果てしない物語』や『モモ』で有名なドイツの作家です。
80年代にはいわゆる「緑の党」やエコロジーなどと思想的傾向が似ていて日本でもよく読まれましたし、作品も映画化されました。
今読むと少し古臭い感もぬぐえませんが、逆にエンデの中の時代の風化をまぬかれる部分を識別しやすいかもしれません。
『夢のボロ市』はエンデがリートと言われるドイツ固有の歌の形式にはめ込むために作った詩作品集です。いずれもわびしくせちがらくそれでいてノスタルジーに満ち満ちた私達の日常生活に材料を拾った詩集です。
『ベルリン天使の詩』という映画の中で、街中をいく人々の心のつぶやきが描かれているシーンがありましたが、『夢のボロ市』を読むとこの映画を見た時の雰囲気がよみがえってきます。
夢のボロ市
きょう、夢のボロ市へ行ってみた。
世界のはじっこにあって、いろんなものがあった。
盗まれたもの、投げ捨てられたもの、壊れたもの、
中古の、そしてそのまた中古の夢の品。
空とぶ絨毯はイガの穴だらけ、
でこぼこの光輪は、星とおさげ髪、
鍵のない空中楼閣は、錆でボロボロ、
昔かわいがられていた人形も、今は首がない・・・・・・
そしてそんなガラクタたちのなかに、突然、
ぼくらの愛の、美しい夢も発見したのだ。
その黄金色は曇っていて、夢は壊れていたけれども、
黄金のようにすばらしく-そしてあいかわらず美しかった。
できればそれを返したいと思って、
蒼ざめた男に尋ねてみた。
にやりと歯のない口をあけ、男は僕を見つめ、咳ばらいして、
恥知らずな値段を吹っかけてきた。
なるほどそれだけの価値はある-けれどもぼくは交渉した。
敵はだまっていた、が、折れなかった。
だから夢は買い戻せなかった。
風向きがよくないんだ。もうそんなに豊かじゃないんだ。
結局すごすご手ぶらで引き返したが、
ひとつ知りたいことがあった。
あれは贈られたのか-盗まれたのか-投げ捨てられたのか?
ねえ、きみ、教えて-どうやってあの夢があそこにまぎれこんだのか?
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